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5月11日(火)いのしし氏に阪神間の古本屋について訊ねたら、阪急六甲のK文庫と、U書店を挙げられた。やはりそうか。私は一九八〇年代の前半、六甲にある大学に勤務していたので、U書店はよく知っている。震災後閉店したと聞いたがその後再開して盛業のようである、K文庫は、私が勤務していたころにはなかった。数年前に偶然発見、前回行った時には、近所ではあるが店舗の位置が移動していて、探すのにてまどったうえ、たまたまサンチカの古書市に出店中ということで休業していた。()。いのしし氏の情報にあった、洋書があるという六甲駅前の学生会館というのも気になる。これはまったく知らなかった。非常勤終了後、阪急六甲へ。学生会館の位置は、駅前で客待ちをしていたタクシーの運転手に聞いて、それらしきものを教えて貰った。大通りから一筋入ったところだが近づくと「古本市」という幟が立っていたので驚く。正確には、神戸学生青年センター。エントランス・ホールを利用して、事業資金を稼ぐための古書販売をしているらしい。普通の古本屋にひけをとらないほどの分量である。古書市は今週いっぱいまでの開催。いいタイミングで情報を得て、決行したわけである。洋書は、他の棚とは別に平台にならべてあった。デュク・ド・ベリの時禱書など中世の彩色写本の写真を集めた The Golden Age: 、キャンプに収容された日系アメリカ人の生活の写真集 Sento at Sixth and Main。タイトルの意味がよくわからないが、Sentoは銭湯のことらしい。デリーのオックスフォード大学出版局から刊行されたMagic Mountains: Hill Stations and British Raji。ヒル・ステーションは、英領インドの時代に、英国人が夏の炎暑を避けるために建設した高地の都市のこと。夏季には行政機関もヒル・ステーションに臨時に移された。カバーの折込みにある解説に、ヒル・ステーションは「(インド)亜大陸の山間に英国文化の飛び地を形成し、アングルカン・チャーチの教会の尖塔、古風なチューダー様式のコテージ、ヴィクトリア朝的な花園がはるか離れた故郷をなつかしく想いださせた」とある。それから、ピーター・バーク編集のNew Perspectives on Historical Writing。一九九一に英国のPolity Pressから出版されたもので、歴史学の新しい傾向を、それぞれその分野を代表する研究者が紹介したもの。これは翌年にペンシルヴァニア大学大学の出版局から出たアメリカ版。この本は数名の共訳で日本語の翻訳も出版されている。私も誘われて共訳に参加し、ジム・シャープの「下からの歴史」、ロバート・ダーントンの「読むことの歴史」、アイヴァン・ギャスケルの「イメージの歴史」の三章を分担した。私が関心のあるものを選択させて貰ったのだが、期待したほどにはおもしろくなかった。翻訳テキストは、最初の会議で配布されたコピーを使用した。他の人が分担した部分も、いずれ日本で読めるわけだしということで、結局、翻訳書の刊行をまって初めて読んだ。つまり翻訳者の一員のくせに、私は原本を所持しないままだったのである。ゆくりなくも、十年以上も経過して、ようやく本日入手することふができた。面目ない。洋書は以上の四冊。すべて三百円である。単行本も三百円。量は多かったが、物色されつくした後のようで、時間をかけたわりに徒労に終わった。一冊だけ、古庄弘枝『沢田マンション物語』。沢田マンションは高知市に存在する、構造も経営も型やぶりのマンションで有名である。経営者の沢田夫妻が、工務店に発注することなく自力で建設した。一九七〇年代に建設を開始して、いつであったかテレビ番組で見たときにはまだ未完成であるとして作業中であった。著者も、サグラダ・ファミリアや郵便配達夫デュヴァルの「宮殿」をひきあいにだしている。そこまでファンタジーに満ちてはいないが、型やぶりなのはまちがいない。屋上緑化ということがいわれる以前から、沢田マンションでは屋上に水田をつくり米作りをしていたし、五階まで車で上がれるようにスロープが配置されている。印象に残ったのは、ベランダにしきりがなく、行き来ができること。というより、ベランダが通路そのものなのである。だから居間のガラス戸の外を他の人が通行している。リフトは鉄骨で組んだすどおしで、恐ろしくゆっくりと昇降する。だからリフト内の人と室内の人がずっと目を合わせたままでいることもある。私は、この状景を、朝日放送の「探偵ナイトスクープ」で見た。この時の放送がよほど強烈であったのか、その後、さまざまな番組が後追いをした。ただしこの本が出ていることは知らなかった。雑誌類の棚からは、講談社の「北斎と広重」シリーズの『江戸百景』。学研の「私のナイーブ・アート館」の「西ヨーロッパ」の巻。文庫は百円で、中公文庫の矢田挿雲『江戸から東京まで』が一ら八まで揃っていたので、ダブりを気にせずすべて購入。代金は、おつりが必要な人を除いて、無人の受付に置いてある箱にかってに投入する方式。私は数が多かったので気がひけてわざわざ係りの人を呼んで、本の数が何冊、金額がいくらと申告してしはらった。うこうにしてみれば迷惑だったかも知れない。阪急六甲駅南のR文庫は、今日も営業していなかった。U書店では、川口松太郎の『新編愛染かつら』。桃源社の前身矢貴書店の本で。装丁は、染色家の喜多村榮太郎である。神戸学生青年センター* 楢崎宗重編『江戸百景』講談社北齋と廣重5、1965年  300円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(一) 麹町・神田・日本橋・京橋・本郷・下谷』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(二) 浅草(上)』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(三) 浅草(下)』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(四) 本所(上)』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(五) 本所(下)』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(六) 向島・深川(上)』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(七) 深川(下)』中公文庫、1975年  100円* 矢田挿雲『江戸から東京へ(八) 小石川』中公文庫、1975年  100円* やなせたかし編『霧の海オリーブの丘』学習研究社私のナイーブ・アート館2西ヨーロッパ、1991年  300円* 古庄弘枝『沢田マンション物語』情報センター出版局、2002年  300円* Marcel Thomas, em>The Golden Age: Manuscripts painting at the time of Jean, Duke of Berry, George Braziller: New York, 1979  300円* Peter Burke ed., New Perspectives on Historical Writing, The Pennsylvania State University Press, 1992  300円Dane Kennedy, The Magic Mountains: Hill Stations and the British Raj, Oxford University Press: Delhi, 1996  300円Gail Dubrow with Donna Graves, Sento at Sixth and Main: Preserving Landmarks of Japanese American Heritage, Seatle Arts Commission, 2002  300円 六甲・U書店* 川口松太郎『新編愛染かつら』矢貴書店、1947年3版  1000円* 山本夏彦『その時がきた』新潮社、1996年  200円

なが時間もデートしてしまった(泣)吉祥寺の映画館の屋上にはバッティングセンターがある。スタービーチ30歳になる年の10月、プロ野球の季節は終わり、私はずっとボールをかっ飛ばしたいと思っていたのだ。ふらりと古びたエレベーターに乗る。たばこの匂いの染みついたエレベーター。おんぼろの緑色の景色が広がっていた。もう7年吉祥寺に住んでいたのに初めて見る風景だった。200円を入れて20球のボールに向かって全力でバットを振り回す。全部空振りした。ホームベースの後ろにボールの山ができた。それから毎日バッティングセンターに通った。ボールをよく見ろとよく言うが、目が慣れてくると手元ぎりぎりまでボールを待てるようにもなった。人は日々進化するのだ。自打球を足に当てて悶絶していると、係員のお兄さんが笑って「大丈夫ですか」と声をかけた。お兄さんはいつもほっといてくれるので心おきなくバットを振り回すことができた。「パズル得意ですか」とお兄さんはある日木の立体パズルを持ってきて私の掌にのせた。私はパズルは得意ではない。しかし私は、これを完成させたらお兄さんともう少し仲良くなれるのではないかと下心を胸の奥深くのカギをかけた部分に忍ばせてその日もぶんぶんとバットを振り回した。パズルは思いのほか強敵だった。「パズルできましたか」とお兄さんから聞かれてしまった。全くとっかかりさえもつかめていないのに。たは。その日営業が終わってからし